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Dr.コラム
<第5回>がん検診で「要精密検査」の 結果がでたら・・・ ~がん検診は、2段階の検診です~

Dr.コラム 予防と検診 がんと生活習慣 がん情報のリンク

がん検診や人間ドックで「要精密検査」の結果が出たとき、皆さんはどうしていますか?がんは精度の高い精密検査を受けてはじめて診断が可能になります。その理由をここでお話します。

具体的な症状がないから精密検査を受けない?

がん検診や人間ドックは、受けるだけで疲れます。そのため「それで終了した」という一段落した感じになります。でも、これらの検診は受けた後の結果が重要であることは間違いありません。どんな結果がくるのか、特にがん検診などはどきどきしますね。
がん検診を受けるとかなりの割合で「精密検査が必要」という結果が届きます。実はこれも「がん検診の検査の一環であり、途中である」と理解していただければと思います。本当に重要なのがここからです。
しかし、がん検診などは具体的な症状がないので、「精密検査が必要」といわれても、「忙しい」「めんどうくさい」「病院にいきたくない」「がんとは書いていない」などの理由から 放置される方が、結構多くいらっしゃいます。また、一方で、「精密検査」ということでもう「がん」であると思って悲観し、受診するのが怖いといって精密検査を受けられない方もおられます。

より精度の高い検査が必要な理由

現在採用されているがん検診は直接がんを見つけるものではなく、「がん」から出る出血や、「がん」の腫瘤を見つけるもので「がん」と直接診断できる検査は含まれておりません。従って、「がん」と診断するには必ず精密検査が必要になります。
さらに、通常のがん検診や人間ドックで実施する検査は、早期の「がん」を見つけ出す高い精度をもつ検査よりも、安全性を重視した検査項目が採用されています。早期がんを見つける検査は、放射線被曝の多いものや「生検」といって組織の一部を取る検査が主体なため、少なからず危険を伴います。本来なら精度も高く、そして安全性が高い検査が理想的ですが、検査にはどれも一長一短があります。がん検診は、健康な方が受ける検査なので検査は何しろ安全でなければなりません。そのためがん検診や人間ドックそのものは、精度が高くない検査も含まれています。
がん検診の考え方は、まず、「がん」の疑いのある人を絞りこんで対象の人数を減らし、その特定の人に対して「精密検査」というもっと精度の高い検査によって早期のがんを見つけ出そうという2段階であることです。 これを専門用語では「1次スクーリング」といいます。「精密検査」が必要という結果の人は、1次スクーリングの結果「がん」が体内にある可能性が高い人となりますので、それを放置しておくことは非常に危険なことなのです。 また、一方で必ずがんが体内にあるということでもないので、いずれにしろ精度の高い「精密検査」によって検査することが重要なのです。

例えば便潜血に陽性の結果が出たとき・・・

例えば大腸がん検診で「便潜血」陽性結果が出てきます。これは口から肛門までの間に血が出る病変があることをしめすものですが、大抵の場合大腸にポリープがあるか、「大腸がん」が隠れている危険があります。日本人は痔核が多いので、痔を自覚されている方は、痔による出血だから大丈夫だなどと放置されている人をよくお見受けしますが、これは最も危険な判断です。
近年男性の大腸がんの罹患率は増加していますが、死亡率はがん検診が普及した結果減少しています。一方で女性のがんでの死因の第2位は大腸がんで増加傾向のままです。女性は便潜血検査自体を受けたがらない人が多いのに加え、精密検査の受診率も低いため大腸がんで亡くなる方が多いのが現状です。便潜血検査では潜血陽性になったら痔の有無にかかわらず必ず大腸の検査を受けていただきたいものです。

精密検査を受けて初めて出る効果

「がん検診」は「がん」での死亡を減らしたいという目的から企画されてきました。これまで労働年齢層での死因の第1位は「がん」であることから、健保組合も会社も費用を負担して、「がん検診」を推奨してきました。自覚症状の乏しいがん、特に早期のがんはがん検診でしか見つけることができず、また早期に見つかれば、命が助かるばかりでなく小さなものであれば切除する範囲も少なくてすむので、QOL(生活の質)を損なうことがないためです。しかし、がん検診は上述したようにあくまで1次スクーリングですので、これを受けただけでは早期のがんを見つけることはできません。どうしても次の精度の高い「精密検査」が必要な2段階の検診方法であることをご理解いただければと思います。
がん検診や人間ドックは、精密検査まで受けていただいて初めて効果が出るものです。従って精密検査の受診率が低いがん検診は、「がん」での死亡者数を減らそうとする対策型検診としては意味がなくなり、結局「がん」での死亡率を下げることができません。

健保組合から受診を促す手紙や電話も

このような理由から、健保組合では、がん検診受診率の向上をめざす以上に精密検査の受診向上に積極的に投資し、がん検診そのものを完結することによって一人でもがん死亡から救いたいと考えています。
そのため、現在被扶養者の方でがん検診にて「要精密検査」の結果を受けた方々には最後まで受診していただいたかを確認する作業を行い、受けておられない方には積極的に受けていただくように、手紙、電話などで働きかけを 行っております。また今後、この動きを社員の方々にも拡大していく方法を考えています。
いずれにしても、がん検診は、精密検査を受けて終了する検診であることをご理解いただき、何とぞご協力いただければと思います。

【参考文献】
〔立道昌幸:シリーズがん検診の今「がん検診で「要精密検査」の結果が出たら・・・」(ソニー健康保険組合HAIJII2012年1月号)〕

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